高齢者と介護予防

2012-09-29

高齢者と介護予防

高齢者と介護予防とは何か、高齢者に多い症状・病気の原因、介護を予防する食事療法などについて紹介。介護にならないように生活習慣を見直しましょう!

まいにちを健康的な生活を送るために生活習慣病ガイドなど、さまざまな情報をご提供します。

高齢者の栄養リスクについて

高齢者の栄養リスクには、非常に多くの問題が考えられます。最も重要かつ頻度が多いのは、たんぱく質・エネルギー低栄養状態(PEM)です。その他のリスクもPEMと表裏一体であり、その多くはPEMが原因となって発生することを認識しなければなりません。

なお、PEMは転倒のリスクファクターです。活動量が減少することにより、栄養状態の低下に拍車がかかります。これらの結果として、QOLは低下し、合併症も起こしやすく、入院日数も長くなり、再入院率も高くなり、死亡率も高くなります。

PEMの治療には、高たんぱくの経腸栄養剤や高たんぱくの治療用特殊食品などを使用します。そのまま経口摂取できない場合には、これらの食品を利用して、ゼリー・ババロアなどを作ります。

※PEMと転倒 栄養状態が悪いと、筋肉の合成も促進されないので転倒しやすくなる。十分な栄養が確保されてこそ、リハビリテーションも効果が上がる。

※治療用特殊食品 不足している栄養素を補ったり、制限したい栄養素を減らしたりした特殊な食品が開発されている。病院や老人ホームなどでは盛んに利用されている。

高齢者がかかりやすい病気

高齢者がかかりやすい病気として以下のものがあります。

(1) 便秘・下痢
(2) 糖尿病・耐糖能異常(糖尿病予備軍)
(3) コレステロールやトリグリセリドの上昇
(4) 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)
(5) 心不全
(6) 高血圧症、虚血性心疾患または脳血管障害
(7) 脳卒中(脳出血、脳梗塞による身不随、寝たきり)
(8) 骨粗しょう症(大腿頚部骨折による寝たきり)
(9) 咀嚼、嘸下障害(誤嚥性肺炎による死)
(10) じょくそう→たんぱく質、エネルギー、亜鉛、銅、ビタミンC (皮膚コラーゲン再生のため)を摂取。
(11) 認知症   ※じょくそう じょくそう治療には体位変換や体圧分散が有効。

高齢者の身体的特徴

生活習慣病対策とは別に、高齢者の健康問題は避けては通れない問題です。高齢者の臓器・器官の萎縮、生理機能の減退などは、個人差が極めて大きく、この差を左右している要素として栄養があります。

高齢者の栄養管理は、医学・栄養学的な視点のみならず、高齢者が置かれている社会的および経済的な立場をよく理解したうえで、行わなければなりません。高齢者の疾病は、加齢による生理機能の低下という一般状態のうえに起こるため、発病時期が不明確で自覚症状に乏しく慢性の経過をとりやすいのです。さらに合併症をともないやすいため、これらのことを十分に配慮した管理がなされなければなりません。

老化によって、次のような特徴が出てきます。

(1) 皮下脂肪の減少 (2) 血液循環の緩慢化(にぶくなる) (3) 温熱中枢機能の低下(アンカやカイロによるやけどが起こりやすくなります) (4) 発汗、体脂肪の分泌低下 (5) 活動能力の低下、活動範囲の縮小 (6) 動作、反射機能の緩慢化(にぶくなる) (7) 寒冷に対する抵抗力の低下 (8) 骨粗しょう症による骨折しやすさ、関節痛や手足の不自由 (9) 視力、聴力の減退 (10) 肛門、膀胱括約筋の弛緩、前立腺肥大などによる排泄 障害 (11) 夜間頻尿(夜間トイレに行く回数が増える) (12) 腹筋の弛緩、消化吸収力の低下、運動量減少などによる老人性便秘 (13) 義歯や味らいの減少による味覚の変化→濃い味を好む傾向 (14) 活動低下による食欲減退、食事量減少→少量で栄養価の高い料理の必要性 (15) 過食継続による肥満 (16) 唾液分泌量の減少→水分の少ない料理や食品は食べにくくなります。 (17) むせやすく、食べ物がつかえやすい(嘸下障害) (18) 胃液分泌低下、肝機能低下 (19) 口渇(喉の渇き)を訴えることの減少→喉が渇かなくても水分補給が必要

以上が老化による心身の特徴で、高血圧症、糖尿病、動脈硬化などの慢性疾患をもつことも多い。

老化に伴う心理的・社会的特徴

私たちの社会的能力は、20歳代から60歳くらいまで安定していますが、60歳を過ぎると急速に低下します。一方、精神能力の上昇は遅く、最盛期は30歳から50歳代で、しかもその後の降下傾向も緩慢です。つまり社会的能力にくらべ精神的能力の低下は起きにくいといえます。精神能力の低下による障害は、ひがみ、無精、忘れっぽくなる、生に対する希望喪失などを起こしやすく、また、長い間の生活習慣を変えることが難しくなることが特徴です。

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